クロスオーヴァー文学とは?

 

クロスオーヴァー文学とは、本来出版社ないしは作者が設定した読者層を超えて、より幅広い読者層に読まれる(クロス・リーディングされる)文学です。この種の文学および現象が注目を集め始めたのは21世紀に入ってからであり、まだそれほど研究が進んでいません。

 

また、「このカテゴリーのフィクションのもっとも重要な特徴はその境界が固まっていないことである」ため(ファルコナー 9)、明確な定義は避けられる傾向にあります。

 

実のところ、大人向けの文学が若い読者層に読まれるという現象は、はるか昔から存在していました。たとえば『ガリバー旅行記』など、若い読者にも比較的読みやすい名作文学を、「翻案」を通して読んだ人も多いと思います。

 

ただ、クロスオーヴァー文学やクロス・リーディングと呼ばれる現象が注目されるようになったのは、逆に本来若い読者に向けて書かれたり、マーケティングされた作品を、大人が読む現象が目立つようになったからです。そして、この現象は、ファルコナーが指摘する通り、近年の「ハリー・ポッター・シリーズ」や『指輪物語』や『ナルニア国物語』などのファンタジーの世代を超えた人気に端的にあらわれるといってよいでしょう。

 

参考文献

Falconer, Rachel. The Crossover Novel: Contemporary Children’s Fiction and Its Adult Readership. New York: Routledge, 2009.